中島みゆき「同じ時代に生まれて」

 映画「中島みゆき『歌旅 劇場版』」を観た。2007年のライブ歌旅を映像化したものである。

 中島みゆきに目覚めたのは、昨年の11月末にマックスとクーと中島みゆきを書いたころであるから、私は本当のにわかファンである。大学時代に“時代”、“アザミ嬢のララバイ”、“わかれうた”などは、ラジオでよく聞いたが、意識して聞いたことはなかった。ただ、“時代”は良い歌だと思っていた。

 今回、中島みゆきがステージで歌っている姿を初めて見た。ステージの上で活発に動く姿を予想していたが、全く違って、スタンドの固定マイクで歌っていた。声は非常に軽やかに出している印象を受けた。昨年からのにわかファンとして、まだアルバムを8枚しか聞いていないが、声の表情は多彩で、曲の内容も豊富だと思う。

 人生60年近く生きてきて、未だに自分は何も学んでいないと思うことがある。自分の存在は、世の中に大して役だっていないし、無力感を感じることもある。そんなときに“命の別名”の「何かの足しにもなれずに生きて 何にもなれずに消えていく」という歌詞は今の自分の姿をそのまま現していると思う。また、“昔から雨が降ってくる”の「昔、僕はこの崖のくぼみの 一粒の虫だったかもしれない」という歌詞、その世界観がすっと心に入ってくる。

 加藤登紀子が良く歌っていた“この空を飛べたら”が、中島みゆきライヴ!に入っていたのでなぜだろうと思って調べてみると中島みゆきの作詞・作曲だった。中島みゆきは自分の知らないところで身近な存在だったのかもしれない。

 映画の中のライブの終わり頃に中島みゆきが観客に向かって「同じ時代に生まれてくれて、ありがとう」という意味のことを言っていた。聞いた瞬間に非常に違和感を感じたが、後で自分なりに納得した。映画を観に来ていたのは年配者ばかりだった。その日の午後、長男がぶつけて修理のために車が無いので、妻の自転車に乗って入院中の母の見舞いに行ったが、そこには自転車に乗るのも危うい自分がいた。約30年前に何となく“時代”を聞いていた自分が、30数年後に還暦を迎えた中島みゆきの歌の良さに目覚める。正に同じ時代に生きてきたんだな、と思う。

 今後も同じ時代を生きていくのだろうと思う。ありがとうございます。

(2012年5月15日 記)

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